今後の高齢社会を考えると整形外科医の必要性は高まるばかりです。高齢社会では外傷・変性疾患の急増が予想されますが、高齢者の手術に対しては既往歴や持病の多さ、全身状態の予備能力の低さから慎重な術前計画、術後管理が必要です。 川崎医科大学附属病院整形外科では骨・関節教室と脊椎・災害教室、手外科・再建教室があります。教室は3つありますが、完全に分かれているわけではなく、一緒に症例検討や手術を行っています。また、患者さんの全身状態に合わせ、内科・外科・麻酔科・救急科の協力の下、治療を行っています。他の病院で手術が困難と判断された患者さんに対しても全身状態を整え、出来る限り病態に対して理想的な治療(手術)を行えるよう、努力しています。 労働災害や交通外傷も救急科と連携し適宜、対応しています。重度外傷の患者さんに対して救急の先生方と初期治療から連携することにより、治療の優先順位の決定や治療方針について意見交換が可能です。整形外科医を目指す人のみならず、医師として「経験する」は教科書や講義では得られない知識です。「教科書で読んだことがある」よりは「見たことある」、「見たことある」よりは「やったことがある」が自分の経験となり、目の前の患者さんにその経験が還元されていきます。当教室では幅広い外傷の初期治療や高齢者の変性疾患に対する治療方法を学ぶことが可能です。特に脊椎疾患、関節疾患、手疾患、多発外傷に関しては色々な経験が出来ると考えます。広く浅くではなく、広く深く色々な疾患を経験することが出来ます。 まず、外傷を含めて急性疾患ですが、上にも書きましたように当院では西日本有数の救急科があり、1次救急から3次救急までを可能な限り受け入れています。大学病院でしか学べない最先端の医療はもちろん、通常は大学病院に搬送されてこない一般的な外傷も学ぶことが出来ます。これは救急科が幅広く医療を展開している影響です。1次救急から3次救急までを可能な限り受け入れることが、救急医療現場にとって良いことか悪いことかは別として、当院である程度の期間、研修を行えば、他の病院を2~3カ所研修しないと経験できない研修を受けることが出来ます。 人工関節を中心とした関節疾患に対しては骨・関節教室のスタッフが中心に治療を行っています。1週間に10例程度の人工関節手術を行うとともに、骨盤の骨切手術やリウマチに対する関節形成手術など、レパートリーは様々です。同じ手術を何回も見るといったことは非常に大切で、五感を通して手術のポイントを習得することが出来ると考えます。執刀と助手を繰り返し、確実な手技を自分のものにすることが可能です。 脊椎では通常の除圧、固定手術の他に内視鏡を使用した低侵襲手術や、低侵襲固定術(MISt)を積極的に行っています。近年、内視鏡手術の適応は広まっており、当院でも安全面を十分検討した上で、積極的に手術を行っています。現在は主にヘルニア摘出、脊柱管狭窄症に対する除圧術を行っています。MISt手術は皮膚、軟部組織を温存することができ、全身状態が悪い患者さんにとって有益と考えます。 整形外科全体の雰囲気も良く、優しく厳しく正確な知識を指導する様、努めております。外来・手術・病棟に加え、緊急手術が多く大変ではありますが、当院では初期研修で研修を受けた研修医が後期研修で整形外科を選択する人が増えています。