*本記事は、2023年10月にオンラインで開催した「専攻医が語る!専門研修生活」の内容です。
市中病院と大学病院で外科専門研修中の専攻医2名が、プログラムの違いや具体的な働き方などを本音で語り合う座談会。今回は、各専攻医が研修中のプログラムを具体的に示しながら、研修内容やプログラムの違いに触れていきます。

出演者紹介

 ◆ファシリテーター◆

 松田 論先生 

 慶應義塾大学医学部 外科学(一般・消化器) 助教

 若手消化器外科医の会「Under40」においてもご活躍中

◆パネリスト◆

渡邉 大海先生 

石巻赤十字病院 外科専攻医3年目

初期研修先:東北大学病院

◆パネリスト◆

金城 大典先生 

大阪大学医学部附属病院 外科専攻医3年目

初期研修先:虎の門病院

専門研修プログラムどう違う?大学病院・市中病院

松田:プログラムの比較表を元に、今ご所属のプログラムの具体的なシステムのご紹介に入っていければと思います。渡邊先生からお願いします。

個人のキャリア選択に沿って進めるプログラム~石巻赤十字病院のケース~

渡邊石巻赤十字病院の外科プログラムに所属していますが、基本的には半年以上は他の病院で研修をすることが、そもそもの外科プログラムの前提になっています。我々の病院は関連病院がいくつかあって、時期や期間は比較的自由に選べる環境です。東北大学の関連病院で、消化器外科の中に血管外科(横隔膜から下)を一緒にやっているような診療科になります。そこで1年半研修を行いまして、主に消化管および末梢血管の研修を行いました。その中で、心臓血管外科や血管外科に強く興味を持ち始めて、心臓血管外科がある病院に行って勉強してみたいと思って、大崎市民病院を選んで研修に行って参りました。半年ほどの心臓血管外科の研修を経て、石巻赤十字病院に戻ってきて、再度研修をしている状況です。

松田:3年間の中で、診療科や期間など、どれだけご自身の希望が通りますか?石巻赤十字病院にもご事情があって、あまり一気に人が行ってしまうと人が足りなくなってしまうことなどにはなりませんか?

渡邊:基本的には2か所くらい(石巻赤十字病院ともう1か所)というのは指導医から提案がありました。あまりたくさん行くというよりは、1か所でしっかり基礎を固めた後、もう1か所見ていくのがいいんじゃないか、ということで私はこのような研修の組み方をしました。同期と行く時期は調整や相談はしましたが、比較的自由に、我々の意思を尊重してくださっていると感じています。

松田:プログラムの同期は一学年2人か3人ですか?

渡邊:1学年1人か2人です。

松田:それで自由度を上げるというのは、病院の方の協力体制というか、サポートが手厚いということですね。

渡邊:比較的自由にしていいよ、と言われてはいます。もちろん空気を読みながら選択はしています(笑)。

松田:もちろん、一番大事ですね(笑)。渡邊先生の場合、血管外科や心臓血管外科にご興味が大きくなったので大崎市民病院で研修した、ということでしたけど、例えば消化器でずっと研修を通したい、という先生の場合はどういう選択をされるのですか?

渡邊関連病院によって雰囲気や特徴が違うんです。例えば、石巻赤十字病院だと呼吸器や乳腺外科が分かれているんですが、ある病院に行けば一緒にやれるところがあったり、病院ごとに特徴があるので似たような病院があまりないという点でいろいろ選択肢はあるかなと思っています。私の場合は、心臓血管外科がある病院の選択肢がそんなに多くはなかったので迷わず決めましたけれど、消化器外科をやりたい人の中でも、開腹を多くやりたい人はA病院がいい、とかラパロをやりたいという人はB病院がいい、など複数の選択肢があります。

松田:なるほど、大変よくわかりました。非常に特徴的というか、ご自身のキャリア選択に沿って進められるプログラムということなんですね。

渡邊:そうですね。

診療科を決めてスタートする研修プログラム~大阪大学医学部付属病院のケース~

松田:では、続いて金城先生お願いします。

金城:僕が所属しているのは、大阪大学医学部附属病院を基幹病院としているプログラムなんですけれども、恐らく市中病院(石巻赤十字病院)のプログラムと一番違うのは、多くの専攻医が恐らく診療科を決めて入ってきているイメージです。もちろん、消化器外科と心臓血管外科とで迷っている方もいらっしゃるとは思うんですけれども、周りを見ているとある程度の人が自分の専門科目を決めて入ってきている人が多いです。連携施設が40施設くらいあって希望を聞いてくれるんですけれども、自分が希望する科の強い病院に行きたいだとか、市民病院系がよい、などを自分で選んで科目も決めて、その連携施設で研修をする、というようなかたちになっています。その中で、初期研修医のうちに集めきれていない症例(例:乳腺外科や呼吸器外科など)があれば、もし自分が所属している連携施設にその不足している科目があれば回らせてもらう、この辺りは各病院の裁量で、恐らく決めているんじゃないかなと思います。小児外科の症例は市中病院ではなかったりするので、そういう場合は基幹病院に2週間だけ戻って症例を集める、というようなかんじでプログラムが進んでいると思います。

松田:なるほど、ありがとうございます。これは非常に大きなグループで、連携施設はどこも人気病院だと思うんですけれど、一学年の人数は多いですよね?20人とか?

金城:消化器外科だけで10人以上いるので、呼吸器外科や乳腺外科と合わせると30~40人いるんじゃないかと思いますね。

松田:多いですよね。それで、金城先生の場合は、大阪警察病院に2年半いらしたということですけれども、その施設の希望はなかなかうまく調整しきれないのではないかと思うんですけれど、どうですか。一つの病院に専攻医が数人ということもあるんですか。

金城:はい、あります。僕も大学時代の同級生と二人で大阪警察病院に行っていました。同学年の消化器外科のレジデントが1学年に3人いるような市中病院もあります。あまり人数制限をかけているところはなさそうな気がします。

渡邊:「消化器外科」って胃・大腸・肝胆膵ですか?

金城:「消化器外科」そのままの括りです。血管をいじったりということはないですし、ヘルニアなどはやりますが、そのほか上部消化管、肝胆膵、大腸、一般的な消化器外科です。一緒に乳腺外科をやっている「一般外科」のようなことはありません。

市中病院と大学病院のプログラムの違い

松田:なるほど。金城先生からもご紹介いただいたように、スライド右側はいわゆる大学病院を基幹病院とした非常に大きなプログラムで、左の石巻赤十字病院のような一学年1、2人の希望に沿って研修が組まれるプログラムですね。例えば渡邊先生から御覧になって、同じ立場でも大学病院に入ろうかなと思う方もいらっしゃると思うんですが、ご自身を振り返って、あるいは大学病院と市中病院のプログラムを比較してみて、何か感じられることはありますか。

渡邊:私自身、外科研修3年間は手術の件数をとにかく稼げるプログラムを探していたので、大学病院のプログラムはあまりマッチしませんでした。症例数についてどのように考えていたか、金城先生にご意見を聞いてみたいのですが、いかがですか?

金城:僕自身は、虎の門病院も外科の基幹病院なので残って外科研修をやるべきか、母校の大阪大学に戻って研修をするべきか迷いました。市中病院のプログラムは大学病院のプログラムに比べると規模が小さくなるので、専攻医が即戦力として各科内で動いていくポジションになる。自分が消化器外科でローテートしたいと思っていても、他科たとえば、心臓血管外科や呼吸器外科のローテートをしている専攻医がゼロ、というわけにはいかないと思うので、労働力の関係で、自分が消化器やりたくても3か月だけ呼吸器回ってと言われてやっていたことがあったんですね。僕は初期研修医時代に症例を集め終わっていたので、3年目以降は消化器外科にフィックスして研修がしたいと思いました。

現在のプログラムでは大学病院での研修は最後9か月なんですけれど、最初の2年と3か月で市中病院でしっかり手術をやった後、大学病院では市中病院では見られない手術を見られるので悪くないかと。移植は大学病院でないとなかなか見られないのですし。消化器外科に所属している時間を長くとる、という意味で規模の大きいプログラムを選びました。

渡邊:なるほど。確かに移植を決定しているという点では大学は強いと思いますね。私自身ももし移植を選んでいたら、大学を選んでいただろうなと思いますね。市中病院でやれることは違いますよね。

金城:逆に、石巻赤十字病院のプログラムというのは、消化器外科や血管外科にフィクスして回っているように思いますけど、例えば呼吸器外科が今月少ないから行ってあげて、とか診療科が決まっていない人も同期にいる、ということもあるんですか。

渡邊:多様です。私も呼吸器外科、乳腺外科、小児外科は研修医の頃に症例が足りていたので、一般外科と血管外科を選択して、ほかはいいです、というかんじで回っていました。それは別に私が研修を希望しなかっただけで、呼吸器外科や乳腺外科で回りたい、といえば回れるし、逆に乳腺外科に特化して回っている人もいます。労働力がどうこうというよりは、個人の意思を比較的尊重してもらえているかなと思いますね。

松田:なるほど。ちなみに、私の所属する慶應義塾大学は大学病院が基幹病院という点では大阪大学のプログラムと近いはずなんですけれど、1年目はプログラムの連携施設に出るわけですが、1年ごとに必ずローテーションします。1年目A病院に行ったら、2年目はB病院、3年目は大学病院、というようになっています。もちろん連携施設の候補はあるわけですが、同じ大学病院のプログラムでも違うな、と思いました。

いかがでしたでしょうか。市中病院と大学病院のプログラムの特徴がわかると共に、ご自身の進路によってはプログラム選択の際にも気を付けたほうがよいポイントに言及されていましたね。先生方のお話はあくまでも一例ですので、ご自身の気になるプログラムを調べる上で参考にしてみてください。
当座談会の様子は以下の動画アーカイブからもご覧いただくことができます。

専攻医の具体的な働き方や

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