医学部卒業後の進路は?
臨床医以外の進路や就職先も詳しく紹介

更新日時:2024年7月31日

医学部卒業後の進路は、どのような選択肢があるか気になる方もいるでしょう。多くの医学生は臨床医の道へと進みますが、医学部で得た専門知識やスキルをもとに、臨床医以外の進路を選択をする人もいます。本記事では具体的な進路や、進路を決める際のポイントなどを解説しますので、将来を見据えてぜひ参考にしてみてください。

卒業後の進路、どれだけ知っている?

医学部卒業後に医師免許を取得し医籍登録がされると、2年間の初期臨床研修を受け、その後3~5年程度の専門研修を経て専門医になる流れが一般的でしょう。
初期臨床研修は医師法によって定められているため、診療活動を希望する場合は、必ず指定の臨床研修病院で2年以上の研修を受けます。専門研修は必須ではないものの、医師としての専門性を向上させるために重要な研修です。
このように臨床医の進路だけでなく、医療行政や研究機関、民間企業など幅広い選択肢も考えられます。努力希望や適性に合わせ、多種多様な進路を目指せる可能性があるといえます。

【医学部卒業後】勤務医・開業医としての進路

勤務医とは、一定の医療機関(病院・クリニックなど)に雇われ、そこで医療サービスを提供する医師のことを指します。医学部卒業後は、まず臨床能力を身につけるために研修医として勤務するのが多い傾向です。勤務医は、どの診療科目を専攻するかによってキャリアが変わります。
文科省「医学部医学科卒業者の進路状況調査」でも、医学生が卒業後に目指す進路は勤務医が圧倒的に多いようです。
また、勤務医としてキャリアを積んだ後に開業する選択肢もあります。開業医とは、自身で診療所やクリニックを開設し、自己の責任のもと患者を診察し治療を行う医師のことを指します。自分自身が経営者であるため、診療所やクリニックの経営・運営に関わる全ての業務を担当します。具体的には、スタッフの管理、設備の維持・更新、経営戦略の立案、医療費請求などが挙げられます。
開業は初期臨床研修を経れば可能なものの、大きな責任も伴い、患者に対して臨機応変に診察をしなければならない場面も多く出てくるため経験が必要です。さらに、高いコミュニケーションスキルも重要でしょう。そのため、実際には少なくとも10年以上の臨床経験を積んでから開業、という流れが一般的です。また、開業するためには経営者としての知識も必要になります。

参考:日本医師会「開業動機と開業医(開設者)の 実情に関するアンケート調査」

【医学部卒業後】医療行政への進路

医系技官

医系技官は、医療や公衆衛生に関する専門的な知識や技術を持つ国家公務員のことを指します。人々の健康増進に寄与するために、医師としての専門知識を用いて保健医療に携わっていく職業です。医師免許取得後に、厚生労働省が実施する「医系技官採用試験」に合格する必要があります。
医療現場での実情を知ったうえで審議会にて問題点を議論し、その後に政策案や法案、予算案の立案業務までを行います。的確な資料作成能力や各所と調整するためのコミュニケーション力など、医師としての専門性のみならず、行政官としても幅広い能力が求められます。

研究機関 

大学や国の研究機関で、医学研究をする進路もあります。未だ解明されていない病気の治療法を発見するなど、医学の発展のために研究に従事する進路です。
人体や生命活動について研究する「基礎研究」と、病気の原因や治療法について研究する「臨床研究」に大きく分けられます。人間の生体機能を理解し、疾患の原因を明らかにし、新たな診断法、治療法、予防策を開発することを目的としています。
医学研究を行うために、まず大学院に進学する方がほとんどです。また、医師免許取得後、2年間の初期臨床研修を受けた後に大学院へ進学することも可能です。

公衆衛生医師

公衆衛生医師とは、地域住民の医療や健康に貢献する仕事で、生活習慣病の予防や感染症、母子保健など幅広い業務に対応します。医師免許を取得し、初期臨床研修を修了した後に都道府県の試験を受け、合格する必要があります。
公衆衛生医師は、医学だけでなく、疫学、社会学、統計学、行政学など、幅広い知識を必要としますが、地方自治体、保健所、大学、研究機関、国際機関など、様々な場所で活動することができる進路です。
参考:医療の視点を変えてみよう! 公衆衛生医師の魅力

【医学部卒業後】民間企業への進路

製薬会社

製薬会社に入社し、主に新薬の開発や医薬品の安全性・有効性の評価、医療機関への情報提供などを行う進路もあります。医師免許取得後すぐに就職をするケースよりも、臨床での経験を活かして、製薬会社で活躍している医師が多いようです。臨床医が持つリアルな患者視点や治療経験が、薬の開発や改良、そして医療現場に対する情報提供に生かされるためです。
製薬業界で働くには、医学の知識だけでなく、薬学や薬事法規、ビジネスに関する知識も必要とされます。また、英語力も求められることが多いです。そのため、これらのスキルを身につけるための追加的な教育やトレーニングが必要な場合もあるでしょう。
参考:MD:メディカルドクターとして製薬会社で働く
参考:製薬企業で働く医師に聞いたメディカルドクターとしてのマインドセットとは

コンサルティング会社

医療系や製薬系のコンサルタントとして活躍する医師も増えてきています。コンサルタントというと、医学部で得た知識が役立つイメージが沸かない方もいるかもしれません。しかし、医学部で学んだ専門知識や、医学を学ぶ過程で身につけた論理的思考を十分に活かせる進路です。また、MBA(経営学修士)などのビジネスの学位を取得することで、より広範なビジネススキルを習得し、コンサルタントとしての競争力を高めることも可能です。
医師免許は必須ではありませんが、医療や製薬業界の最新動向を追い続けるために、自己学習や継続教育にも意欲的であることが求められます。

民間企業の産業医

民間企業での産業医の役割は、企業や組織の従業員の健康管理や、を守り、快適に働く支援をすることです。仕事内容としては、従業員の健康診断や、労働環境の安全性・健康に対する評価、メンタルヘルスの管理などがあります。
産業医になるためには医師免許はもちろん、労働安全衛生法第13条第2項の定めにより、厚生労働省が行う産業医研修を修了していることや、労働衛生コンサルタント試験に合格していることなどが求められます。働き方改革など職場環境が変化していく中で、医学的な知識だけでなく、労働法や労働衛生に関する知識も必要とされる進路です。

介護保険施設

介護保険施設で医師として活躍する選択肢もあります。超高齢社会にともないニーズが高まっている進路でもあり、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設などが就職先です。卒業後に医師国家試験を受験し、医師免許を取得することが必須条件です。
看護師や介護職、理学療法士など他の医療・介護専門家と協力して、利用者の健康と生活の質の向上に努めます。また、利用者やその家族とのコミュニケーションも重要な役割の一つであり、その個々のニーズや希望を理解し、それに対応する適切なケアを提供することが求められます。

【医学部卒業後】その他への進路

法医学医

法律にまつわる問題を、医学的見地からアプローチして解決に導く職業です。死因究明、身元確認、死体の解剖、遺体の鑑定などを行います。また、犯罪事件や事故の捜査に関連して、法医学的な知識を用いて証拠を集め、解析する役割も担っています。
医師免許のほかに、死体解剖資格や法医認定医資格が必要とされるうえ、複数の学会報告や機関長からの推薦状も必要です。社会的貢献度の高い職業であり、特に犯罪や事故の再発を防止するため、公正な犯罪捜査や裁判において大きな役割を果たします。

大学院への進学

6年制の医学部を卒業した後は、直接博士過程に進学することが認められています。「医学部卒業後○年目に通わなければならない」という決まりはなく進学ルートはさまざまで、医師免許を取得後、2年の臨床研修を終え、大学院へ進学するケースもあります。
大学院では、自分が特に興味を持つ医学の分野を深く学ぶことができ、その分野の専門家としての知識とスキルを身につけられます。また、大学院を卒業し、博士(医学)の学位を取得すれば、大学で教鞭をとる資格を得ることができるため、次世代の医師や研究者を育成する役割を担うことが可能になります。

留学

医学部卒業後の留学には大きく「研究留学」と「臨床留学」の2パターンがあります。
研究留学は大学病院からの派遣となり、所属の医局とつながりのある海外の大学や病院で研究ができます。研究成果が出るまでを期限とするケースや、数年単位を期限とするケースもあります。
臨床留学は外国の医師免許が必要であることが多く、免許が取得できれば医師として海外で働くことができます。ただし、海外での資格取得は難しく、資格取得後も面接などをクリアしないと医師として働くことはできません。

起業

医師免許を取得している医療系のベンチャー企業社長は意外と多く、卒業後の進路のひとつといえます。医療関連のアプリ開発会社や医療情報メディア運営会社など、医学部卒業した方や医師が設立した会社も多くあります。
医師が起業を選ぶ要因の1つとして、医療現場での課題や不満を自身の手で解決したいという強い意欲が挙げられます。医師としての経験から得た知見を基に、より効率的で質の高い医療サービスを提供するため、起業を決意する方も多いです。

進路を決めるためのポイント

医学部を卒業した後の進路を検討する際は、以下のようなポイントから考えることをおすすめします。

自分がやりたいことをもとに進路を考える

患者の治療をしたいのか、世の中に役立つ研究をしたいのか、知識をビジネスに活かしたいのか、自分が本当にやりたいことを考えてみてください。やりたいことであれば努力もいとわず頑張ることができるでしょう。
医学部卒業後、多くの人が勤務医として働くことを選んでいますが、自分がやりたいことを明確にし、進路を考えることが大切だといえます。

先輩など第三者の意見をもらう

進路先を決める際には、先輩の話を聞くなど、第三者の意見をもらうことも大切です。1人で考えすぎてしまうと、判断が鈍ることもあります。OB・OG訪問などをする、就職説明会に足を運ぶなどして、積極的に第三者の意見を聞いてみましょう。
全国の約850病院が参加する日本最大規模の合同説明会レジナビFairでは、医師だけでなく、公衆衛生医師や矯正医官が参加する会場もあります。実際に話をすることで、仕事のイメージがわいたり、自分に合うか合わないかが考えやすくなるため、上手に活用することをおすすめします!

早めのタイミングから就活をはじめる

進路を決めるにあたっては、早いタイミングから将来のことを考えて就活をはじめてみるのもよいでしょう。勉強や研修などが忙しく、病院探しや就職活動の時間が取れない方もいらっしゃると思いますので、早めに動くことで自分に合った進路を見つけやすくなります。
しっかりと進路を検討するためにも、就職活動は4年生から始めておくことをおすすめします。レジナビWebには、進路選びに役立つ情報やマッチング対策など様々なコンテンツがありますので、活用してみてください。

やりたいことを明確にして、
進路を決めましょう

今回は、医学部の卒業後の進路先についてご紹介しました。多くは臨床医となるものの、医系技官や研究機関など医療行政を選ぶ人や、製薬会社など民間企業に就職するという選択肢もあります。法医学や大学院への進学、留学や起業などさまざまな選択肢もあり、迷うこともあるでしょう。
進路を決めるために、まず自分がやりたいことを明確にしてみましょう。しかしながら、頭の中でのイメージだけでは実際にやってみて違うと感じる可能性もあります。そのためにも、第三者からの意見を参考にすることをおすすめします。
ぜひ、自分に合った進路探しにお役立てください。 

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