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腎臓バウチャープログラムが移植希望患者の命を救う

2021/07/05
パッケージニュース
腎臓・泌尿器
外科

腎移植の世界にはジレンマがつきものだ。将来的に腎移植が必要になることが予測される若い患者に高齢の家族が腎臓を提供したいと思っていても、今すぐに移植が必要なわけではないからだ。それゆえ、家族は腎臓提供をしないままでいる。しかし、腎移植では、ドナーの供給は需要を満たしていないため、年齢や状況による絶好の移植の機会を失うことがたびたびあり、それが問題となってきた。そんな中、この問題を腎臓バウチャープログラムと呼ばれる制度により解決できる可能性のあることが、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)David Geffen医学部のJeffrey Veale氏により報告された。この研究の詳細は、「JAMA Surgery」に6月23日報告された。 このバウチャープログラムへの登録対象者は、家族に腎移植が必要になったときにはドナーになりたいが、当面(1年以内)は腎移植の必要な人がいないため、家族への将来の移植を担保しながら、緊急の移植が必要な他人への腎臓提供を希望する者。腎臓を提供したドナーは、自分が真に助けたい家族を最大5人まで指定することができ、指定された人はバウチャーを保有する。ただし、最終的にバウチャーを使うことができるのは1人だけだ。バウチャー保有者は、将来、移植が必要になったときにこのバウチャーを使うと、移植待機リスト上で即座に「優先」の地位が与えられる。Veale氏は、「バウチャーは、将来使えるクーポンのようなものだ。特に、年齢的にはすぐに腎臓を提供する必要があるが、そのタイミングでは腎臓を必要とする家族はいない高齢の生体ドナー希望者にとっては、非常に合理的な仕組みだ」と話す。 ただし、バウチャーを譲渡することはできず、また、移植が必要になった際に即座に腎臓が提供されることを保証するものでもない。また、優先順位は生体ドナーから提供された腎臓の場合にのみ適用されるほか、バウチャー所有者が死亡するか、何らかの理由で移植の資格を喪失した場合には、バウチャーは無効になる。 腎臓バウチャープログラムは、民間の非営利団体であるNational Kidney Registry(NKR)により開始され、現在では全米79施設の移植センターで利用されるまでに広まった。では、この制度により腎臓の提供量は増加したのだろうか。この点を明らかにするために、Veale氏らは、NKRの2014年1月1日〜2021年1月31日のデータの分析を行った。 その結果、調査期間中にバウチャー制度を利用して250人が腎臓提供を行ったことが明らかになった。ドナーの年齢中央値は46歳(19〜78歳)で、62.8%が女性、96.4%が白人だった。また、この間のNKR登録者の間での移植待機期間は、3カ月以上短縮されたことも判明した。さらに、この間に6人がバウチャーを利用して移植を受けていた。バウチャー履行から腎移植までの期間は、36日から155日の幅があった。 こうした調査結果を踏まえてVeale氏らは、「バウチャープログラムは、意図された通りに機能している。大切な人に対する移植がカバーされることが分かっていれば、臓器提供を躊躇している生体ドナーを提供へと促すことができる」と話している。 米マウント・サイナイ病院Recanati Miller移植研究所のDianne LaPointe Rudow氏は、「生体腎移植の需要が供給を大幅に上回っていることを考えると、歓迎すべき結果だ。生体腎移植の方が通常、転帰が良好であるだけでなく、移植腎も長持ちする。さらに、バウチャープログラムを使えば、移植のタイミングを図ることができるので、透析に何年も費やさずに済む」とこのプログラムの利点を強調。なお、同氏によると、米国では、毎年、約9万8,000人の患者が腎移植の待機リストに登録されるが、実際に移植を受ける患者は約3万9,000人である。その中で生体移植は、わずか5,000〜6,000例を占めるに過ぎないという。 その一方でRudow氏はドナーに対して、「本プログラムはあくまで民間の非営利団体が運営するものであり、政府の監督下にないことや、移植が必要になったときにこの団体が存在している保証はないことを理解しておくべきだ」と注意喚起している。(HealthDay News 2021年6月24日) https://consumer.healthday.com/6-24-innovative-kid… Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.