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Monthly特集|放射線腫瘍医と海外でのキャリアについて

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最終回 「行くべきか、行かざるべきか」

筆者プロフィール
内野三菜子
トロント・プリンセスマーガレット病院(トロント大学医学部連携がん専門病院)
放射線腫瘍科臨床フェロー

内野三菜子

1998年東京女子医大卒。
東京医療センターにて外科研修、聖マリアンナ医大放射線科、
埼玉医大放射線腫瘍科を経て2010年1月より現職。
最終回はトロントでの経験から留学の是非について考えてみたいと思います。

留学について

何事にもメリットとデメリットがあります。

異なる言語文化環境下での臨床業務から得られる体験は、あまねく人とその生き様を対象とする職業の者として、かけがえのないものとなるでしょう。
一方で十分に日本でも習得可能な技術ならば、言語のハンデのある所で学ぶのは非効率的です。
渡航の諸準備も想像以上に時間と労力を奪われ、しかもその労力はキャリアとして戻ってはきません。

行く価値を吟味する際に忘れてはならないのは、医療は社会のあり様によって大きく異なるということです。

カナダの医療

カナダは英国式に近い皆保険制度ですが、専門医への受診には必ず家庭医の診察と紹介状が必要で、専門医へのアクセスは本当に必要とされる場合のみに限定される、徹底した集約化が見られます。

治療計画の立案中治療計画の立案中

例えば、プリンセスマーガレット病院(PMH)の放射線腫瘍科は18台の治療装置に大阪府全体とほぼ同数の放射線腫瘍医、放射線治療を実施する放射線技師と別で技師出身で治療計画を立案するPlanner、治療計画の安全性の検証を行う医学物理に関する博士号を有した医学物理士と呼ばれる専門家集団、腫瘍専門の看護師達を有しています。

しかし、Cancer Care Ontarioという第3者評価機関の調査と助言に基づき、トロント中心地の放射線治療装置はPMHに全て集約し、他の病院には設置しないと定められているのです。いくらトロント地域の人口が300万人、東京首都圏の10分の1でも、通院支援のボランティアや遠距離在住患者用の宿泊施設が用意されていると言っても、患者の負担は少なくありません。

それでもトロントの市民はそれを社会の合意として選択し受け入れている、それがこの社会の医療のあり様なのです。

日本の医療との比較

これだけ整った制度の下にあれば、日本の医師と比べ患者の診療や自らの研究により多くの時間を割くことができますし、大規模な比較試験も容易に行えるでしょう。このような集約化は、外科系各科のように多くの手術症例を手掛けることが技術の研鑽に直結する分野のトレーニングは日本に比べて非常に有利です。

しかし、カナダ国内ですら他病院では専門職が必ずしも整っている環境ではない放射線腫瘍医の場合、手厚い環境でのトレーニングはむしろ不利に働きます。優れた環境もそれをそのまま日本の現状の医療に反映することは、保険制度や世論の性質上、すぐの実現は困難です。

違いを実感することは有益ですが、それは見る眼さえ開いていれば短期の視察や見学でも学べます。余計な労苦、日本で経験が積めたかもしれない貴重な年数をそこに費やし、結果「使えない」医師になり、日本で叶わぬ条件をただ嘆くだけが、果たして自分の望む未来でしょうか?

海外での雇用条件

一つ一つのポジションの積み重ねとプレゼンスの向上が、自分のみならず後から来る他の人の次ステップにもつながります

私はキャリアを国外に求めることを「留学」と括るのがそもそも不適切だと思っています。

単なる憧れ理由の渡航も「学ぶ」と言えば体裁も整いますし、留学準備を頑張る自分も素敵に映るでしょうが、職歴の長短を問わず、臨床か研究かの別を問わず、我々は既に免許を持ったプロフェッショナル、ベストの仕事をしてその働きを社会に還元する者であるはずであり、それは直接の雇い主からの正当な報酬を伴ってしかるべきものなのです。言葉の不利を思うなら、それは責任のある仕事ができるレベルまで克服せずして土俵に乗ることは原則として叶わないものなのです。

研究留学の場合は無給のケースも多いでしょうが、無給でよしとすることはつまり、相手側からは報酬を伴う責任ある仕事は任せられない程度としか扱われかねない事も意味します。

状況によりやむを得ず無給からの開始もあるかもしれませんが、期間限定の留学だから/今までの先輩達もそうだったから、無給でいいという考え方は不当に己の価値を叩き売ることであり、「日本人MDは無給で使える」という状況を先方に刷り込ませることは、努力で有給のポストを得た先人には失礼、互角に渡ろうとする将来ある後輩には迷惑でしかありません。

ましてや無給であることを誇りとするような心構えは大いに慎むべきで、仕事をしに行く以上、国内の勤務先は雇用条件を検討するのに海外は気にしないのはおかしいという自覚が必要なのです。

キャリアを国外に求める

留学という言葉の響き、土地や病院の名前に、気負うでも舞い上がるでも臆するでもなく、世界のどこでも何語ででも己の「仕事をしに」行く、これが「キャリアを国外に求める」ことの本来ではないでしょうか。

実際、自分が迎える側ならば、きっちり良い働きをしてくれる人でなければ要らないのは当然でしょう。
臨床「留学」でも研究「留学」でも、しっかりとした研鑽を踏まえ「仕事をしに」行くことに焦点を置いて考えれば、自分にとってどのような形が最も相応しいかはおのずから見えてくると思います。
そしてその結果、行こうと思ったならばその時は、十分に準備をし、送り出してくれる周囲の人に感謝をし、潔く向かうのがと良いと思います。

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