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医学生のお勉強
By 東海大学医学部長・黒川清とゆかいな仲間たち
「生活習慣病」を文明と生活という観点から考えると
おのずと対策が見えてくるというものです。
セッションのオリジナルタイトル/Hypertension, Salt, and Kiney: How and Why
食塩ナシでも血管がキュッとなって血圧を維持する
- 黒川:
そうなると今言った細胞外液量という血圧の第1の規定因子が、おそらく毎日の食生活で変わる。変わるけど、血圧を一定に保つために何が起こっているか。食塩を摂っているかさっぱりわからない。だけど食塩を何日も摂ってないと、どんどん減っちゃって困るわけじゃない。ショックになっちゃう。だから腎臓では尿にでてくるNaClを0にまですることができるんですよ。NaClを摂ってなければ尿中排泄量は0になる。これができる。ところがKの場合は絶対に0にならない。例えばまったくKがないような食事を何日もしていても、毎日10か20mEqくらい尿にでる。「必要のないことはしない」というのが自然の摂理です。ではなぜかというと後でも話すのでわかってくると思うけど、Kを摂らないということは自然の生活ではありえない。だけど自然の世界で食塩を摂らないということはあり得るからなんです。
ここまでいい?
そうすると、食塩の摂取量がすごく少ないところにいるとすると、いつも細胞外液量が少ないわけ。だけど血圧を維持しないと困るわけ。そのためには何をしているか。そのために血圧を設定する第2の規定因子「レニン-アンジオテンシン-アルドステロン・システム(RAAS)」がある。こんなの今は覚えなくていいよ。このRAASはおもしろいことにね、肝臓でできてるアンジオテンシノゲンという物質が、常に一定の量でたくさん血中にあるんだけど、これに「レニン」という酵素が働くとアンジオテンシンⅠになる。そして、肺の中に変換酵素というのがあって、血液は体中を回っているから、血液が肺に1回入ると、このアンジオテンシンⅠはみんなアンジオテンシンⅡというのになる。このアンジオテンシンⅡというのが血管の平滑筋に作用して血管をキュッと緊張させてくれる。例えば食塩がだんだん減ってくる→細胞外液が減ってくる→血圧が下がりそうになると血管がキュッとなって血圧を維持している。だから頭の中にも血液がちゃんといっているんだよ。例えば食塩摂取量の少ない人にRAASをブロックするような薬を与えてやると、途端に血圧がドンと下がってショックになる。
もう一つは、アンジオテンシンⅡは副腎に作用してアルドステロンというホルモンを作るんだけど、このアルドステロンは何をするかというと、腎臓の遠位尿細管に作用して尿中に食塩を出さないようにする。食塩を一生懸命に体に戻してやろうとする。だからRAASは、食塩が減ってきたときに血圧を維持しようとしながら、一方で食塩を体の外に出さないようにしているんだ。
ということは、「RAASの活性の調節はレニンがしている」ということになるね。アンジオテンシノゲンは過剰に血中にある。レニンが作用するとその分だけアンジオテンシンⅠができるけど、これはすぐアンジオテンシンⅡになってしまう。そしてこれが血管に作用する一方でアルドステロンを作る。このレニンは腎臓の糸球体の入り口で作られているんだ。
食塩がちょっと減ったなというだけでレニンがでるようになっている。ものすごく鋭敏な機能を持っている。というのは、自然の社会ではその機能がないと、食塩がなくなったときに、血圧が下がる→食塩が尿中に垂れ流しになる→あっという間に血圧が低くなって、肉食動物に食べられちゃう。だから生き残れない。
仲間たちの横顔 FILE No.14
Profile
私は大学で心理学を学んできました。人間に対して心理学的側面からのアプローチを考えていました。しかし、人々が抱える問題の中で「病」というものが大きな比重を持つことから、心理学に加えて医学を学ぶことが出来たなら、もっと広い視野から問題が見えるようになるのではないかと思い、医学を志すことにしました。
Message
現代社会で問題となっている医学にかかわりの深い事柄について、先生方や仲間たちと真剣に語り合う機会が持てたことは貴重な体験だったと思います。これからも引き続き考えていくべき多くの課題に巡り合い、一つの物事を多面的に考えることができました。どうもありがとうございました。
