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医学生のお勉強 「クレイジー」な国ニッポンを理解しよう
By 東海大学医学部長・黒川清とゆかいな仲間たち
Chapter1:安楽死 The 8th week

知って欲しいことはピルやバイアグラの作用や副作用はともかくとして
その背後にあるもっともっと大きないくつもの問題です

セッションのオリジナルタイトル/Aborrtion, Contraception, and Gender Issues

from K.K
日本でもようやく低容量ピルが9年かかって認可されました。一方でバイアグラはあっという間に認可されました。この違いはなぜでしょうか。
 しかし、医学生に知って欲しいことは、ピルやバイアグラの作用や副作用はともかくとして、その背景にあるもっともっと大きないくつもの問題です。妊娠中絶はどのくらいの数があるのか、そこにどのような背景があるのか、また、ピルとAIDSは関係があるのか、世界のAIDSの現況と日本のハイリスクセックスでのコンドーム使用率、ピル使用は女性の権利であるという当たり前の考え方、望まない妊娠を避ける方策として最も安全性が高いとか、ピルについての啓蒙活動の重要性などについての論議がありました。
 さらに、これらの背景にある日本の夫婦の関係、女性の社会進出、男女の関係と社会のあり方の変貌、男女共同参画社会へむけて、日本の社会の現状と将来への展望等、議論は尽きなかったと思います。
セッションのオリジナルタイトルは「Aborrtion, Contraception, and Gender Issues」です。

日本はピルの認可が国連加盟国で一番最後だった。そのワケは
黒川: みんな何か読んできた? いろんな本を読んだとおもうけど。じゃあ、誰が司会するの?
――: 昨日よく寝た人がいいと思う。
黒川: 今日のテーマは「妊娠、中絶、ジェンダー・イッシュー」という大きなテーマ。
司会: すごく広いテーマなので、どこかとりあえずフォーカスするところを見つけたいと思うんですけど、何か読んできた本でここにフォーカスしたいという意見があれば、まず出してください。
:黒川: 一つはね、国連加盟国189ヵ国ぐらいでピルが認可されたのは日本が一番最後。何で? っていうのがけっこう問題として、いいかな。その背景には何があったのか。
司会: バイアグラの認可がめちゃくちゃ早かったのはどう?
――: なんとなく、そのバイアグラの認可が早かった裏には、日本の社会にはジェンダーの認識の違いもあるって思うんですけど、例えば女性が自分の意思で避妊をする。その選択肢はすべてではないですが男性と平等にあると思います。
――: 男はいくらでも種を蒔いてもいいけど、女の人は貞操を守らなければならない。
司会: バイアグラの認可が早かったっていうのは、認可のプロセスが長すぎということと、もう一つはそんなことをやっている間にブラックマーケットができてどんどん不法な流れがあるから、「だったらもっとすばやく認可しよう」という動きがあって、早かったって聞いているけど。
――: ボクが言っていることがすべてではないけど。いろいろあるんだろうけど、性に対してはそういう男女の違いが背景にもあるのかな? って単純に思っただけ。
黒川: いろいろな意見があっていいと思うよ。別に正解があるわけじゃないから。
――: ピルは遅かったけど、他の避妊法は女性のほうにもあったとおもいます。ピルが遅くなったのは、やはり安全性とかの問題かな?
――: 私が読んだ本では、最初、60年代にピルは使われていて市販されていたんだけど、それは安全でなかったということで一度廃止されて、80年代ぐらいにもう一度ピルを解禁しようかという話がでたけど、そのときにエイズが流行り始めたってことがあって、それで長引いたという話が書いてありました。
黒川: 事実としては、60年代終りから中容量ピルというのがでてて欧米で使われた。その最初の世代のピルっていうのは副作用が大きい。そして低容量ピルっていうのがでて、今はそれが主流。中容量ピルっていうは生理を遅らせるということで、日本でも使えるようになっていたんだね。生理を遅らせる目的で中容量ピルを使っている人は多い。でも避妊目的でのピルとしては認められていなかった。「低容量ピルをどうやって使うか」ということで申請されてから10年経ってしまった。ちょうど90年頃からだから「エイズが増えるんじゃないか」ということで、なかなか認可されないうちに国連加盟国で日本が一番最後になってしまった。という背景がある。ただバイアグラがでたっていうことを考えると、どうなのかな?
――: 今回このテーマだったんで、ちょっとメールに書いたんですが、実は私の父が家族計画を専門としていて、本人は「自分が低容量ピルを日本に紹介した」って自慢しているんですけど・・・よくわからないんですけど・・・無口な日本人男性だから・・・(笑)。ただ昨日ちょっとその無口を割って聞いたところによると、先生がおっしゃったように80年代にかなり低容量のものがどんどん開発されたそうです。ドイツなどで開発されているものを日本の家族計画協会とかの人たちが見つけて、初めて100錠低容量ピルを取り寄せて、もちろん認可も出ていない段階で使い始めていた。父はかなり積極的に同意したかったそうです。夫婦のためというよりも、望まない妊娠をして、中絶をして、体を壊してしまうような特に女子高生とか若い女の子たちが、いざというときに使えるようにしたかったというのが、本音だったのではないかと思います。混乱している人たちもいると思うんですが、高容量ピルと低容量ピルの副作用っていうのは全然違って。だからこそ先進国の中で日本だけが低容量ピルの認可をこれだけ遅らせたのを、先生は問題にされているのだと思いますが。
黒川: いや問題ではなくて、事実としてあるんだけど、ってことです。
――: この3月に産婦人科関係の人たちの会合に行く機会があったんです。ピル導入の今までの経緯とかを聞いたところによると、ものの見方っていうのは立場が違うひとによって全然違うと思うんですけど、これまではマスコミも行政も「なるべく入れないように」ってしていたそうです。別にピルだけじゃなくても、日本人のホルモンに対するアレルギーっていうのが昔からあって、反対されるのを恐れていたんでしょうね。実際去年ピルが解禁されてたときに、毎日新聞に低容量ピルの特集があって、女性記者が「自分がピルを使ってみました」というような経験談など書いていましが、結局それも推進派の人たちに言わせると、すごく否定的なとらえ方をしていたと。実際に取材も来たけれども、それもすごくシニカルに切り返されてしまったとおっしゃっていたんです。それはものの見方の違いでわからないんですが、全体的な風潮として「入れたくない」というのがあったんではないかな? って思います。
黒川: このクラスではみんなしゃべるんだからね。どんどん発言してね。
  なんか「日本の文化のためにピルの解禁が遅れた」という意見と、「副作用が怖くて認可をとどめていた」という2つの点があると思うですけど、それについては・・・。
――: コンドームはどうなんでしょうか? アメリカとか、遅かったんでしょうか?
黒川: コンドームはどこでもあるんじゃないの。
――: 日本でも導入が遅かったんでしょうか?
黒川: それは知らないなあ。
――: 普通だったらアメリカで導入されたものが、日本とかいろいろなところでけっこう使われたり、世界で使われているものが日本で使われるんだとおもいますが、今の話で日本人のホルモンに対する抵抗力っていうか、もし日本人に特有の弱い部分があったとして、それを理由でおくれたっていうんだったらわかるなあ。
――: アレルギーっていうのは、実際のアレルギーじゃなくて精神的なアレルギーという意味で。
――: 詳しいことはよくわからないんだけど。
――: 私も毎日新聞の記事を読んだんですけど、個人的な意見ですけど、認可されてもなんとなく否定的にとらえちゃうっていうか・・・。飲んだらいいこといっぱいあると思うんだけど、与えられる情報として、やっぱり体にいろいろと悪い影響を与えるんじゃないかという気持ちが大きいんですよ。みんなもそうなんじゃないかな。
――: なんでそういう気持ちがあるのかな?
――: やはり全体的に使っている人が少ないし、女性誌とかで特集があってもピルの利点の情報量があまりにも少ないってこともあるんじゃないかなと思います。私は以前海外に住んでいたときに、周りの女子学生がビタミンとかを飲む感覚でピルを毎朝飲んでいたりして、聞いたことがあるんですよ、「大丈夫なの? そんなに飲んで・・・」って、そうしたら、「全然大丈夫」って。みんな飲んでいるからそれが危ないものとして認識されていない。肌がきれいになるって聞いて、私も飲んでいたけれど・・・。
――: 知らないものに対してのアレルギーみたいなものがあるんじゃなの?
――: あと産婦人科にあまり行く機会がないから、そこに行ってもらわなきゃいけないというのは、ピルとの距離を遠くしていると思うんですけど。
黒川: それはそうだね。
――: すごく基本的な質問なんですけど、ピルはどこで購入できるんですか?
黒川: 今、日本の場合では薬局では買えないから、まず婦人科医に行かないといけない。
――: じゃあ、今言っていた外国の女の子も産婦人科に行ってもらっていたんですか?
黒川: どう? そのへんは。
――: 私はそうでした。婦人科に行って、「ピルがほしいんですけど」というと、一応すごく簡単な問診とかして、すぐ処方してくれました。
――: 薬局とかじゃ買えないの?
――: 薬局とかで売っているところもある。でも私の場合には初めてだったから、一応先生に診てもらったほうがいいって友達にすすめられたので病院へ行きました。
――: いくらぐらいなの?
――: あまり覚えていないけど、あまり高くなかったと思うよ。
黒川: 今、日本ではいくらぐらい? 1ヵ月で3000円ぐらいかな?
――: コンタクトレンズと同じような感じだと思うんですけど。最初はコンタクトレンズは眼科に行って検査しないと買えなかったじゃないですか。でも今はどこに行っても買える。コンタクトって、最初は何が起こるかわからなかったからあまり使いたがらなかったけど、今はほとんどみんな使っているじゃないですか。
――: じゃあ、ピルももうしばらくしたら、日本でも薬局とかで普通に買えるようになるのかな?
――: 僕はそう思います。安全性が完全に確認されたら。今も安全性が完全に確認されたから、解禁されたと思うんだけど。
――: そういうふうになると女の子も購入しやすくなるし、より身近になる。使っている人が増えると、その人に影響されて使い出す人も増えると思うし。やっぱ病院に行ってもらわなきゃけない、ってなると、それだけ何かがあるから病院に行かないともらえないんだろうな、って思うし。そう思うとなんか、こう・・・。
――: どんなに命が大事だってことをアピールしても、今、保険証って各家庭に1枚しか配られていないじゃないですか。例えばピルとかがいかに制度として整備されても、ある程度避妊をしようとすればできる20歳だったら保険証を持って産婦人科へ行くことも可能だけど、一番アボーションする世代の16歳、17歳のリスクが高い女の子が自分の保険証を持っていなければ、「お母さん、ピルもらいたいからちょっと保険証使いたいんだけど」って、言うことができる? どんなに薬の制度が整備されていても「一番届けたいところには届かない」ってことが問題なんじゃないかなって思っています。
――: 保険証って1人1枚になるんでしょ?
――: 遠隔地とかはそうなんですけど。
――: 制度が変わるとか。
――: 今の状況では、家庭の会社の組合にはいっている保険証を使うことで、疾患名まではわからなくても、自分の家族がどこの科に受診したのか、病院名とかが世帯主にわかるようなシステムである以上は、例えばピルとかの制度が変わっても、医療のプライバシーというか、自分のプライバシーが守られていない。一番セクシャルな部分とかプライバシーのかかわる部分には届かないんじゃないかって気がします。
黒川: それはグッドポイントだね。特にピルを必要としている人が扶養家族の場合には保険証は家族と一緒だから。
――: まず質問です。なぜこれは病院でなければ今はいけないんですか? 将来はさっき言っていたコンタクトのようにオープンになると思われるんですけど、ピルはいけないような禁忌症っていうのはあるんですか?
黒川: ある。書いてある。高血圧、スモーカー、肥満、というのは一応イギリスの他の外国のデータでは「ハイリスクですので気をつけてください」ということで、「最初もらうときには必ずドクターに言いなさい」っていうようにしてるんだけど。行政としてはピルを飲む人には必ずインフォームされてるってことを保証したい。でも毎月とか2ヵ月おきにピルをもらうってことは、そのたびに受診をして同じ話を聞いているだけじゃない。実を言うと、ホントかどうかわからないけど、例えばアボーション=人工妊娠中絶を毎年40万人がしているっていうことは、これは保険適応外だからこれで儲けている人がいるかもしれない。「インカムがなくなる人っていうのは誰? 婦人科の医者じゃないか」っていう冗談もある。だから、ピルの処方は婦人科じゃなくてはだめって言っているのはナンセンスだろう、とかね。ピルのリスクや禁忌症の話をするだけで内科だっていいわけじゃない。そういうのはどうかな。アメリカやイギリスなどでは普通は女性のヘルスチェックはファミリードクターにお願いしている。だから自分のファミリードクターとかですませる。日本みたいにわざわざ婦人科に行って健康診断とかを受けるってことは、すごくマイナスイメージ。
――: 婦人科っていいイメージが全然ない。
――: すごく行きづらい。
黒川: そりゃそうだね
――: 男の人もいやだよね。
――: 保険証を使っていった場合、翌月に会社で配られる通知にはどこの病院に行ってどこの科に受診したとかって全部でている。だから父親が「産婦人科」って見たら、「おい、奥さんと娘とどっちが行ったんだ」ってことになって不安だろうし。


仲間たちの横顔 FILE No.5
Profile
駒澤大学文学部米国文学科を卒業後、一年間浪人し、一般受験で東海大学に入学し二年次に編入学しました。現在医学部の三年生です。駒澤大学在籍時に就職を本気で考えたとき、学校の先生になろうとも考えましたが、一生の仕事を選ぶのであれば医師として社会に貢献したいと、一念発起し現在に至ります。私の父は耳鼻咽喉科医ですがその影響は大きく、父と同じ仕事に就きたいという気持ちもありました。両親には大変感謝しています。現在は勉学はもちろん、アルバイトや遊びもバランスよくこなし、視野の広い人間になれるよう精進しております。将来は宇宙一の町医者になり、その後、文部科学大臣になって日本の教育を改善していきたいとうっすら軽く考えてます。
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授業は、参考文献を自分で何冊も用意しテーマを事前がっちりと予習してきている人、予習はしていいが本だけは格好つけて持ってきている人、テーマも知らずにきて意見があれば堂々と発表する人、何も発表せずに時間が過ぎるのをただ待つ人など、様々なスタンスの学生がいておもしろかった。日々の勉強に追われ、目前の試験科目と格闘していると、つい初心や、入学時の志を忘れてしまいそうになる。そういったものを考え直すという意味では役に立ったと思う。ちなみに私は、テーマだけは一応知っていました。

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