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第6回 SPAM的アプローチ ~Primary Surveyの実際編 Vol.2

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前回は実際の救急外来での症例を基に、SPAMの“Primary Survey”をご紹介しました。救急車到着から初療室への搬入までの数秒の間に、「SPAMのポーズ」で「危険な第一印象=First Impression」をとり、患者さんの異常がA(airway, 気道)、B(breathing, 呼吸)、C(circulation, 循環)、D(意識, Dysfunction of CNS)のどこにあるのかを把握します。そして、そのいずれかに異常を確認したら、声高らかに「誰か~!! IV、O2、モニター!! 」と叫ぶ初期対応の流れがPrimary Surveyでした。

SPAMのSecondary Survey

Primary Surveyに引き続いて行われるのがSecondary Surveyで、これは救急救命目的評価のPrimary Surveyと違い、「診断・治療目的評価」と位置付けられます。Secondary Surveyでは患者さんに関する情報収集、問診と身体所見を踏まえた疾患鑑別、検査や治療までを行いますが、ここでもフローチャートに従って進んでいけば戸惑うことはありません。

まずは情報収集です。情報収集の基本は3つの“カ”、すなわち「患者」、「家族」、「カルテ」です。患者さん自身に問診できないときでも、家族や付き添いの人、以前のカルテの情報をかき集めましょう。
そして、集めた情報を基に鑑別を想起します。SPAMでは、解剖学的異常に対するABCDアプローチ、および胸痛や腹痛に対する症候別アプローチ、のそれぞれに鑑別疾患のゴロ合わせやフローチャートが用意されています。(参考画像参照) 忘れたときは、ポケットにしのばせたアンチョコカードを取り出して確認すればいいだけのことです。
問診はおなじみのAMPLES(Allergy, Medication, Past medical history, Last meal/Last menstruation, Event, Social history)で行い、同時進行で、鑑別に応じた身体所見を取っていきます。

SPAMの一連の流れの中で常に気をつけなければならないことは、バイタルサイン(脈拍、血圧、呼吸数、体温、意識レベル)です。バイタルサインの経時的変化に常に気を配ることはもちろんですが、このうちいずれかに変化が見られた時は必ずPrimary Surveyに戻り、ABCDの再評価を行います。

それでは、前回の救急室の症例に戻ってSPAMのSecondary Surveyの実際を体験しましょう!!

前回までのまとめ

突然の呼吸困難感を訴えて救急車を要請した69歳の男性が、浦添総合病院ERへ運ばれてきました。患者の手を取り、口元に耳を傾けて「SPAMのポーズ」をとり、Primary Surveyを行った研修医は、自らが感じ取ったFirst Impressionを周囲のスタッフに叫びました。

「呼吸促迫していて橈骨動脈も触れにくいです!! ショック状態です!! 応援呼んでください!! IV、O2、モニターお願いします!! 18Gでラインを取って生食を全開で落として!! 酸素はリザーバーマスクのまま!! 血圧は実測してください !! 」

ところが、バイタルサインを測定しようとした看護師から、末梢が締まっていて静脈ラインが取れないと報告を受けます。

Secondary Surveyの実際

研修医はここで自分を落ち着かせるために大きく深呼吸し、先日受講したSPAMのSecondary Surveyを思い出そうとしました。…しかし、うまく思い出せません。そしておもむろに、そんなときのために用意されたSPAMのアンチョコカードをポケットから取り出しました。

研修医
(ポケットに入れてて良かった~。今回は、呼吸困難とショックでBとCの異常だからこの2枚のカードだな。そうだった、その前にまずは3つの“カ”だ!! )

患者さんは呼吸困難感が強く問診ができない状況で、さらに当院への通院歴はないためカルテもありません。しかし付き添いの家族から、痛風のために処方された痛み止めを飲んで10分ほどしてから体が熱いと言い始め、下痢と嘔吐、息苦しさが始まったとの情報を得ました。普段は健康で、ここ最近もいつもと変わった様子はなかったとのことでした。

研修医
(ん~、状況から考えると薬が何か悪さしてそうだな…。薬が原因の呼吸困難とショックか…。取り敢えずはBの異常に対してはリザーバーマスク全開でSpO2が99%となんとか対応できている。でもまだショックの状態でCの異常は続いているからこっちをなんとかしないと。対処をするにもまずは鑑別疾患を考えないといけないな…。)

SPAM的ショックへのアプローチ

ここで、SPAMアンチョコカード “Cの異常:ショックのStep”に素早く目を通しながら、ショックの原因鑑別を進めていきます。

研修医
(ショックの鑑別はその通り“SHOCK”で考えればいいんだった。患者さんの首に頚静脈の怒張は見られないな。呼吸音は左右差はないし、crackleやwheezeも聞こえない…。心音は頻脈で聞き取りにくいけど、心雑音やgallopはなさそうだ…。ということは閉塞性と心原性ショックは考えにくいな。
確かに手足は冷たくて末梢は締まっているけど、出血や脱水を思わせるようなエピソードもないしなあ…。
ふむふむ、そうなると敗血症性ショックかアナフィラキシーショックに絞られるな。そう考えて他の身体所見を取っていこう。)

ここ最近の患者さんに先行感染を疑わせるエピソードはなく、基礎疾患や易感染性のリスクファクターも持ち合わせていないとの家族の話でした。

研修医
(となると、アナフィラキシーショックか?でも、アナフィラキシーなら、敗血性ショックと同じで末梢は温かいはずだけど…。でも…。)
「もしかしたらアナフィラキシーショックかもしれないです。服を脱がせてみましょう!! 」

指示を受けて看護師が上着を脱がすと、胸からお腹にかけて発赤しており、全体に掻きむしったあとがありました。

研修医
やっぱりそうだ。呼吸困難が急性に進行していることと、薬を飲んでから症状が出ていることを考え合わせれば、敗血症性ショックよりもアナフィラキシーショックの可能性が高いな。確かにアナフィラキシーでは最初は末梢は温かいけど、ショックが進行すれば末梢が締まってきて冷たくなってもおかしくはない。
研修医
「アナフィラキシーショックだと思います。ボスミン0.3ccを筋注して!! 」
看護師
「はい!! ボスミン筋注ね!! 」

すると、みるみる患者さんの呼吸状態は落ち着いてきて、橈骨動脈も力強く触れるようになりました。

研修医
「末梢ラインが取れたら、生食を開始して抗ヒスタミン薬とステロイド投与も始めて下さい。」

研修医はアンチョコカードをポケットにしまい、ほっと胸をなでおろしました。
落ち着いた後に患者に話を聞いたところ、以前にも痛み止めで眼瞼浮腫と呼吸困難があったとのことでした。今回も痛風に対して出された鎮痛薬によってアナフィラキシーショックを起こしたのでしょう。

看護師
「先生、ナイス・マネージメント!! 患者さんの命、救ったね!」

ベテラン看護師さんにそう声をかけられてほっと胸をなでおろした新人研修医。しかし、ひと息つく間もなくホットラインの黒電話が鳴り響きます。
(リリリリン)「はい、浦添総合病院ERです!! 」

研修医の闘いは始まったばかり。そしてこれからもまだまだ続きます。
でも、いつもどんなときも、SPAMで学んだ知識と行動力、そして実際にそれを現場で活かして培ってきた自信で、これからも多くの患者さんを救っていってくれることでしょう。

SPAMのこれまで、そしてこれからの展望

SPAMは浦添総合病院で毎年開催されており、2009年度は2回のコースが開かれました。特に昨年11月に行われた第9回SPAM(Advanced SPAM)には、浦添総合病院も参加する群星沖縄プロジェクトの関連病院からだけでなく、海を越えて県外からも学生や研修医の参加があり大きな盛り上がりを見せました。コースは半日をかけて行われ、簡単な講義の後の実践的なシミュレーションをメインに行われます。講義内容からシミュレーションのシナリオに至るまで全てが歴代研修医の手作りで、まだまだ発展途上であるのも事実ですが、自分たちでコースを作り上げていき、毎回パワーアップしていくことを実感する、とてもやりがいのある活動でもあります。もちろん、シミュレーションと現実のERでの活動の差を少しでも埋めるため、そして各ブースでの講義内容やシナリオの正確性、妥当性を保障するためにも、上級医や指導医の先生方にもご協力いただいています。
日々、救急外来で救急対応をする研修医にとって、SPAMのようなシミュレーションを何度も重ねていくことで、実際の症例に遭遇した時にも慌てずに対応できるようになるとともに、自分たちのこれまでの初期対応を振り返るいい機会になっています。

今後は、講義やシミュレーション内容の充実と、SPAM全国展開が目標です。
現在のSPAMは主に救急車の対応を想定していますが、外来患者や病棟での急変に関するシミュレーションコースも思案中です。
また、要望があればSPAMを院外や県外で開催する“出張SPAM”も構想中です。各病院の体制や役割によって、研修医に任せられている救急対応にも多少の違いがあるのは当然のことだと思いますが、どんな状況でも研修医が戸惑うことなく、その場に応じた対応ができるようになるコースを一緒に考えていけたらと考えています。
なにより、SPAMを通して、志を同じくする研修医同士の意見交換や交流の場になったり、某ドラマを観ながら救急デビューを夢見る学生さんたちにも、救急の現場を疑似体験する機会を提供できたりすれば、主催する私たちとしても嬉しい限りです。

次回のSPAMは、今年6月もしくは7月を予定しています。今回のレポートを読んで少しでも興味を持った方は、ぜひお気軽に問い合わせいただき、気軽にご参加下さい!!

文責:東 拓一郎(一年目研修医) / 山内 素直(二年目研修医)

問い合わせ先:syamauchi@jin-aikai.or.jp(第8・9回SPAM実行委員会代表 山内素直)

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